接着剤の使いやすさ解説:粘度のTI値の関係
さて、今回も「接着剤の使いやすさ」についての記事になります。
まず皆さんが使ったことのなる接着剤を二つ思い浮かべて下さい。
多くの接着剤初心者は「瞬間接着剤」「木工用接着剤」が多いと思います。
さてこの接着剤を部材に塗ってみた時に接着剤の液体としての流動性ともいえる性状が大きく異なっていたと思います。一般的な瞬間接着剤はさらさらしており、木工用接着剤はもう少し水あめのようにもったりしていたと思います。(瞬間接着剤の中にもゼリー状のものもあります)
この流動性ともいえる指標をどう判断するかというと、「粘度」という指標で判断します。
液体を取り扱う化学メーカー勤務や食品会社勤務でないと全くみたことないと思いますが、こちらは液体を回転または横に動かしたときの抵抗を指標化したものです。
なのでまずこの値が大きいほど抵抗が高いためにどろどろしていて動かしにくいのに対して、こちらの値が小さいほうがさらさらしているということです。
ちなみにホームページで確認すると、
瞬間接着剤(アロンアルファEXTRA):2 又は100mPa・s
木工用接着剤(木工用605):27,000mPa・s
参照:木工用605|製品|建築用|セメダイン株式会社 (cemedine.co.jp)
瞬間接着剤 アロンアルフア | 接着剤 | 東亞合成株式会社 (toagosei.co.jp)
となります。このことからもメーカーが用途に分けて粘度を変えていることがわかります。
当然ながら粘度が低い方がさらさらしていて広がりやすいもののでこぼこある部材には上手く接着できない可能性があります。そのため木工用接着剤は木材の表面がでこぼこしているためにある程度高い粘度の方がその場にとどまってくれて使いやすいというわけです。
ここまで話した内容には続きがあります。それは世の中のものには粘度が高いのに素早く触ると柔らかくなる材料が存在しています。具体例を挙げると生クリームやマヨネーズです。
これらは絞り出すときはそれほど強い力が要らないものの絞り出した後は横面であろうとしっかりとその場にとどまってくれる。つまり流動性に対する抵抗が大きい、粘度が高いというわけです。
ここで矛盾していることを言っているようで混乱してしまったら申し訳ありません。ただ物理に強い人は気づいたかもしれませんね。
実は粘度には「速度依存性」を付与できるという特長があります。要は生クリームのように絞り出すときの早い力には粘度を下げて、絞り出し後のゆっくりとした変形には粘度をあげることで動きをなくす原理というわけです。
これは簡単に確かめたりすることができます。例えば使い切ったマヨネーズの容器に水をいれて絞り出してみると思いのほか力がかかり、下手をすると新品のマヨネーズよりも力が必要であることに気づきます。
これは水は速度依存性を付与していない材料であるために、速度を上げても粘度が高いままであるために重く感じる現象というわけです。
この性質をチクソトロピー性といいます。ちなみにこれを数字にしたものがTI値といいます。
TI値の具体的な説明としては2種類の異なるせん断速度(回転速度)における粘度の比である。一般的には回転速度を1 : 10に変化させて,それぞれの粘度の比から求める。 となっています。(ちなみにほぼ同じ意味でSVI (Structural Viscosity Index) と記載されているものもあります)
こちらのTI値はそれぞれのメーカーで記載しているものとしないものがあるので仕様書を確認してみるとよいと思います!
私個人としてはこのTI値は高いほど早く動かしたときの抵抗が少ないために使いやすいと考えていますのでこの指標は大切してます。
ただメーカーごとで粘度は記載していても正直その値から作業性を導くのが難しい人向けにざっくりとした私の粘度領域を伝えて終わりたいと思います。
低粘度:水 1 mPa・s TI値=1.0
食用油 50 mPa・s TI値=1.0
ソース 5Pa・s(=5,000mPa・s) TI値=2.0
生クリーム 30 Pa・s(=30,000mPa・s) TI値=6.0
紙粘土 500 Pa・s以上
測定していないのであくまでざっくりとした指標として参考にしてくれたら幸いです。
一般の皆さんが入手できる接着剤の多くは生クリームまでが多いと思うのでそれらの接着剤の粘度に意識して使ってみるとより上手に張り合わせることができると思うので試してみてください。
さいごに
今回は接着剤のカタログに記載されている粘度について解説しました。意外とカタログにはいろんな情報が載っているのでこれらの情報は少しずつ掘り下げていきたいと思いますね。
気になることや感想は書いていただけると執筆者のやる気につながっていきます!
最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました!それではまた次の記事で。
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