接着剤の耐熱温度について
さて、今回も「接着剤の耐熱温度」についての記事になります。
私もブログをはじめていろいろな記事を見ているのですが、接着剤の耐熱温度についてメーカーのカタログを紹介するような記事が多く、ちょっと勘違いしそうな記事が多いので書くようにしました。
そもそも接着剤の耐熱温度は何℃でしょうか?
カタログ見ると120℃、150℃、200℃、300℃と様々な記載があります。これは熱劣化促進試験と耐熱性能試験(その温度環境下での接着性能)をごちゃごちゃになっていると思います。
これは私の認識ですが、
メーカーのカタログは「耐熱温度=熱劣化促進試験」、ユーザーが求めるのは「耐熱温度=耐熱性能」
だと感じています。
なので今回はユーザーが求めていると考えている「耐熱性能:その温度環境での接着性能」について記事を書いていきます!
まず硬い接着剤と柔らかい接着剤では耐熱性能を述べるが異なってくるためにまずは分かりやすい硬い接着剤の耐熱性能に述べていきます。
硬い接着剤の耐熱性能 ガラス転移温度Tgが接着性能の境目である
硬い接着剤はこれまで「エポキシ接着剤」「アクリル接着剤」「ウレタン接着剤」「木工用接着剤」があります。さてこれらの耐熱性能を比べるときにはどの値を見ればいいのでしょうか?
実はこれは簡単に決まっています。それは
ガラス転移温度:Tg
これに注目して下さい!
ガラス転移温度は樹脂の物性が大きく変化する点と考えてもらえればいいです。つまり硬い接着剤(用語ではガラス状態)からゴムのように変化する温度となります。
要はこの温度を超えると物性が硬い接着剤からゴムのような接着剤に変化してしまい、性状性能を維持できない温度です。これは耐熱性能に結びついていることがわかりますね。
全てのメーカーさんのカタログで記載されていないかもしれないんのでその時はメーカーさんに問い合わせてもよいかもしれません。
それでは私のガラス転移温度からの耐熱性能ランキングを発表します!
1位 アクリル接着剤 70℃~180℃
2位 エポキシ接着剤 40℃~80℃(ただし1液加熱型エポキシ接着剤は除く)
3位 ウレタン接着剤 40℃~60℃
4位 木工用接着剤 40℃以下
世の中の全ての接着剤までは網羅できませんが、ざっとカタログを調べた結果はこんな感じです。
あれ? カタログやHPに記載されているよりも低いと思った方も多いと思います。
あくまでカタログやHPにのっている耐熱温度は熱劣化促進試験(=その温度環境下で暴露する。暴露後に接着性能が落ちていないか室温で確認する)がメインなので用途が耐熱性能=その温度環境での接着性能の場合はしっかりとガラス転移温度を確認することをお勧めします。
ちなみにアクリル接着剤がエポキシ接着剤とウレタン接着剤よりも耐熱性能が優れているのにも理由があります。
これは大学化学の内容になりますが、アクリル接着剤は基本はラジカルを用いた重合反応です。それに対してエポキシ接着剤とウレタン接着剤はエポキシ基やイソシアネート基に求核剤がアタックする求核付加反応となります。
要は重合反応と付加反応だと反応速度が異なり、生成される分子構造も全く異なっており、ラジカル反応を用いるアクリル接着剤の方が耐熱性能が良い傾向が出るというわけです。
ただし、ここで注意してほしいのは私は全ての接着剤で耐熱温度に幅を持たせています。これは耐熱性能は各社接着剤メーカーのポリマー量や充填剤の配合量によって様々です。そのためにあくまで私は一般論として耐熱性能を述べているので使用する接着剤の耐熱性能はメーカーさんのカタログをしっかりと確認することをお勧めいたします。
少し長くなってしまったので柔らかい接着剤の耐熱性能は次の記事で紹介します。柔らかい接着剤は硬い接着剤とは異なる設計なので少し耐熱性能を評価するにはコツがいるかもしれませんね。
さいごに
今回は接着剤の耐熱性能についてでした。いろいろな記事を見るようになってからカタログに書いてあることや書いてないことをまとめると面白いかなあと考えています。これらの記事をまとめていくのでよかったらまた読みにきてください。
気になることや感想は書いていただけると執筆者のやる気につながっていきます!
最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました!それではまた次の記事で。
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